伝承遊びは学習心理学の理に適っている

 加古里子(かこさとし)さんが5月に亡くなりました。「だるまちゃん」シリーズ、『からすのパンやさん』『どろぼうがっこう』などのユーモラスな絵本、『かわ』『たいふう』などの科学絵本。絵本作家であるとともに、伝統行事の描写や伝承遊びの調査収集等を行った児童文化研究家でもありました。「伝承遊び考」(全4巻小峰書店2006—2008)をめくっていますと、自然の草木や輪ゴム、割りばし集めた遊び、絵かき遊び、あやとり、こままわし、石蹴り、鬼あそび、じゃんけん遊び等子どもの頃好きだった遊びを次々と思い出します。中でもまりつきやゴム段をよくしました。
 ゴムの高さは、足首、膝、腰、脇、肩と段々高くなっていきます。途中でひっかかるとゴムを持つ役になります。そして次に跳ぶ順番が回ってきたらその都度一番低い高さの足首から挑戦です。それを繰り返して、最後は頭の高さでした。
 大人になって運動学習の心理学の勉強をはじめて、伝承遊びは実にその理に適っていると気づきました。失敗して持ち役になっている間、子どもたちは友だちの跳び方をみながら観察学習をしていますし、課題は易しいものから難しいものへという学習の方向を持ち、再挑戦では失敗した高さからではなく、最初の高さから始めるのですから、技を確実にしながら先に進むという方法をとっています。竹馬もまりつきも同じです。
 子ども社会のタテ・ヨコのつながりや世代間の経路を通して伝えられ受け継がれる伝承遊びは、指導者による計画的な教授でなく、子ども同士が互いに見せ合い・教え合い・学び合いする子どもたちの姿に学習の仕方の基本を見ることができます。
 

池田裕恵