遊びは子どもにとって「必然」です

 「子どもには“遊び”が必要」ということを耳にすることがあります。でも、本当にそうなのでしょうか。私たちの研究グループでは、子どもの“からだ”にこだわった研究を続けています。具体的には、子どものからだ、心、生活が「どこかおかしい」、「ちょっと気になる」という保育・教育現場の先生方、あるいは子育て中のお母さん、お父さんの“実感”をたよりに、子どもの“からだ”にこだわって“事実”を明らかにし、その“実体”を追究する研究活動に努めています。そのような活動をしていると、「すぐ“疲れた”という」、「何でも面倒くさがる」、「休日明けは元気がない」、「うつ傾向」等々。耳を疑いたくなるような子どもの存在を教えてもらえます。ただ、からだにこだわった活動を続けていると、それらの問題の一背景に前頭葉機能、自律神経機能、睡眠・覚醒機能といった「神経系」の問題がみえてきます。
 その点、子どもの「遊び」には神経系に大切な要素がたくさん含まれています。例えば、「身体活動」です。そもそもヒトは動物です。動物は「動」く「物」と記すように、活動しなければヒトにも人間にもなれません。そのため、神経系に限らずヒトには身体活動が大切です。また、外遊びをすればおのずと「太陽を浴びる」ことにもなります。これもヒトが昼行性の動物であることを考えると、それが大切であることもわかっていただけるでしょう。さらに「ワクワク・ドキドキ感」。いわゆる「心」の身体的基盤の一つと解されている前頭葉の育ちにはこれが欠かせません。つまり、ヒトを人間たらしめている部分の育ちにも大切というわけです。
 いかがでしょう? 子どもの遊び、とりわけ「伝承遊び」には、ヒト・人間の育ちに大切な要素がたくさん内包されているのです。そう考えると、「伝承遊び」は発達欲求によって創造され、それが伝承されてきた文化とも考えることができます。つまり、遊びは子どもにとって「必要」なのではなく、「必然」なのです。
 

日本体育大学体育学部教授 野井真吾