世界を獲るノート
アスリートのインテリジェンス

島沢優子著
株式会社カンゼン出版
 

 子どもの体力低下、運動能力の低下が指摘されてから久しいですが、その後、多様な運動 をすることの重要性が指摘され、運動遊びプログラムの実施が推奨されるようになりまし た。しかし、それだけで本当に改善の方向に向かっているのでしょうか。
運動遊びの減少は運動能力低下と関連付けられますが、その点だけが強調されると単に運動能力を向上させるための方策がとられることになります。つまり運動促進のための方法としてスポーツを活用する。そのことが、スポーツの早期専門化に繋がり、高度な技術についていけず運動嫌いになり体を動かさなくなる要因になってしまうのです。加えて、スポーツ現場への親の関わり方が問題視されるようになりました。
スポーツライターの島沢優子さんは「部活があぶない」(講談社原題新書2017)のなかで、親は二つの「主義」を卒業しましょうといっています。その二つの主義とは「結果主義」と「わが子主義」のことです。部活の話なので一見小学生年代の親とは無縁な話と思われがちです。しかし、スポーツ少年団の活動の中で、すでにこの二つの主義が始まっていることを私自身が様々な競技の大会でみてきました。この主義が勝利至上主義を生みパワハラ問題へと発展していくのです。このような環境では主体性を持って自らが考え、判断できるようなインテリジェンスをもった子どもは育たないのではないでしょうか。
島沢優子さんの新書「世界を獲るノート アスリートのイン テリジェンス」では世界基準のアスリートが語る「書く」「話す」の重要性を専門家解説で解き明かす「言葉とパフォーマンスの因果関係」。本書から今スポーツの育成現場で求められるインテリジェンスとは何か考えてみたいと思います。
 
 

NPO法人バルシューレジャパン理事
福士唯男(2017年受講)