ボールの特質と子どもの遊びの拡大の指導

 近年「子どものボールの投げ方が下手になっている」とよく耳にするのは、北海道だけの状況ではなさそうである。
 その解決のために指導者は何を指導すべきなのだろうか。
 そこで終戦間もない頃に育った私自身はどうやってボール遊びをしていたのか思い出してみた。常に投げる動作は捕える動作とセットで遊んでいたように思う。うまく投げたり捕えたりできないと友達とは遊べないから、先ずは一人で遊べることを考えた。頭上に放り上げては捕らえることから始まり、地面に叩き付けて落下してくるところを捕える。舗装もされていない地面には窪みや小枝や小石が落ちていたり一様ではない。全身と腕の大きな振り下ろし動作と手首のスナップを使わなければ高くは弾まず捕えるにも苦労する。次は家の屋根に投げ上げる。投げる勢いや距離によって、転がり落ちてくるスピードや位置が変わる。屋根をふいている素材によってはイレギュラーが起きるのである。遊び相手が有っても無くても飽きずに遊ぶことができた。そこには飽くなき遊び心と、多くの試行錯誤を通して得た「投げる」醍醐味があったように思う。
 子どもは生後3か月も経つと自分の体を使って試し遊びを始める。ボールを投げる楽しさはお座りやハイハイができる頃から転がすことを出発点として知っていく。たまたま弾んだボールに楽しさを感じ再現を試みる。そこが投げる動作の始まりとなる。そこから途切れることのなく、楽しさを追求した新しい発想のボール遊びが幼少年に「ボールの特質と遊びの拡大」を与えてくれる。
 指導者はボール投げの評価の観点を出来栄えばかりに置きたくなるが、どこに楽しさを見出しているか、楽しみ方を評価の重点に据えてみるのはどうだろうか。
 

北翔大学短期大学部
名誉教授 晴山紫惠子