鉄棒やボール運動ができなくても人生は困りません。音楽だって同じだと思います。スポーツや運動が何故勧められるのでしょうか。

 「にんじん」や「肉」を食べていなくてもこれらに代わる食材もあって人間は生きていけます。また、歌うことが苦手で楽器が演奏できなくても生きていけます。でも「にんじん」などの食材を食事として摂ることは体をつくり、健康的な生活を送るために効果的で大切なことです。音楽も同じように情感豊かな人生を送るためには大切な文化です。私たちが充実した人生を送るためにはこうした食文化や音楽、小説や絵画、そしてスポーツなどの文化に触れたりこれらを享受したりすることが他の動物と異なる生き方であり、文化人類学では「ヒト・人間」を「ホモルーデンス(遊戯人)」と呼びます。ちなみに知恵を
持った動物を「ホモサピエンス」と呼びます。
 「ボール投げ」や「鉄棒」も「にんじん」などと同じような大切な運動教材(食材)であり、体をつくり、さまざまな身体運動やスポーツを楽しむための運動技能・技術のひとつです。
ボールを投げたときのそう快感や鉄棒ができたときの達成感が私たちの人生を豊かにしてくれます。また、腕を回す、ボールを捕る、鉄棒で体がぐるっと回ることにより、動物としてのヒトが有している身体支配能力が高まり、水泳、バレーボール、テニスなどなど、多くのスポーツを楽しみ、豊かな人生を送ることが可能となります。さらには、天変地異などの不測の事態に遭遇した時には自分の身を守ることにもなります。
 このような理由から学校体育では、人間の持っている身体能力を発達させ、スポーツや各種運動を楽しむことができるために、器械運動・陸上競技・水泳・球技・ダンス・武道・身体つくり運動の7つの領域の体育教材が、代表的な運動教材として子どもたちの発育発達のために扱われています。
 

(回答者)
静岡産業大学経営学部スポーツ経営学科
教授 小澤治夫