食事や栄養が、発育発達や運動能力・体力に及ぼす影響について教えて下さい。

 私たちの体は、100%「私たちが食べたもの」からできています。筋肉、骨、臓器、皮膚、毛髪など、身体組織の全てが、食べたものからできているわけです。
 もちろん、お腹いっぱいに満たせば、どんなものを食べてもよい、ということにはなりません。筋肉には主にタンパク質が、骨には主にカルシウムやタンパク質(コラーゲン)が必要、といったように、身体を構成する組織が必要とする栄養素の種類と量の適正な摂取がなければ、頑健な身体は構築できません。
 また、エネルギー代謝においては、炭水化物とともにビタミンB群が必要です。なぜなら、エネルギー源である炭水化物が十分摂取できていても、その燃焼反応に必要な補酵素であるビタミンB群がなければ、エネルギー産生反応が十分に進まないからです。それは、ちょうど、車にガソリンが十分に補給されていても、エンジンオイルが十分になければ車の走行に支障が出る、という例えとしても用いられます。
 体内の免疫物質も、栄養素から作られます。したがって、必要な栄養素が十分に摂取できなければ、免疫物質が十分に合成されず、免疫力は低下し、感染症などの疾病リスクは高くなります。
 成長期の栄養不足は、筋肉や骨、脳の健全な発達を妨げます。エネルギー摂取不足は、運動量の限界が狭まり、トレーニング効果やコンディションの低下を招き、疲労回復に支障をきたします。また、運動だけでなく、勉強などの脳活動でも、多くの糖分(エネルギー源)を必要とします。
 私は、公認スポーツ栄養士・管理栄養士有資格者としても、日頃より、専門的な指導を行っていますが、栄養士でもない一般の方々にとっては、毎日の栄養バランスをどのように心がければよいのか、わからない人も多いかもしれません。まずは、「五大栄養素」をキーワードとして、日々の食事内容に気をつけていくことをお勧めします。
 五大栄養素とは、タンパク質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルのことです。偏った食事というのは、この五大栄養素のどれかが欠けている食事といってよいでしょう。タンパク質はお肉・魚・卵・乳製品などに、炭水化物は飯(米)・パン・パスタなどに、脂質は油脂類に、ビタミンやミネラルは、野菜・果物に多く含まれています。まずはできることから気をつけていきましょう。


 
(回答者)
仙台大学
教授 早川公康(2010年受講)