教室は生きもの
札幌市の運動教室「げんきキッズ」の步み

 平成18年度に子どもの体力向上事業として札幌市に発足した運動教室「げんきキッズ」(通称:げんきキッズ教室)を紹介します。この運動教室は当時まだ産・学・官連携の用語が耳新しかった頃、「札幌市」、「現(一財)さっぽろ健康スポーツ財団」、「北翔大学」、「有)札幌運動教育研究センター」の4者の連携事業として、幼児と小学生(低)を対象に札幌市の各区体育館を中心に展開する教室です。生活だけでなく運動やスポーツを楽しむ上で必要な基本的動作が身につく重要な時期の子どもを対象としたこの教室は、基本的運動(走・跳・投・支持・操作等)が遊びを通して身につくようなプログラムを提供して“身体をダイナミックに動かすことの喜びを第一番に感じられる”、まさに「元気な子どもづくり」を目的としています。
 当初の保護者からは「遊びではなく、跳び箱跳びや逆上がりを教えて!」と、小学校体育教材の先取り的な指導を求められることも多く、それに対し指導員は事業目的の「遊びの持つ力」を伝える指導に注力し続けました。その実践の成果を5年目に「げんきキッズ運動プログラム集」にまとめ、当教室が“めざす子ども像”“めざす指導者像”“めざす教室像”を掲げてプロジェクト認定指導員間の共通理解を深めることに努めました。12年間を経過しても開設当初に掲げた3つの「めざす像」を変えずに実践できたのは、いつも変わらぬ受講者(児)の歓声と笑顔の力であり、その歓声と笑顔に応えようと研修を惜しまない指導者の姿勢であります。また、教室の運営に関わる諸課題を検討する連携4者による組織「げんきキッズプロジェクト委員会」の存在も欠かせません。
 それらが“変化する時代の力”と子どもの“伸びようとする普遍の力”に対応した教室運営を可能にしています。
 さて、今日も札幌市のどこかの区体育館で教室が開かれています。
では指導員に聴いてみましょう‼ 「あなたが教室で大切にしていることは何ですか。」
K.Y.指導員 運動の基礎となる走運動を多く取り入れ、遊びの中で感覚的に身につけられるよう指導者との関わりやプログラムの作成を重視。子どもだけでも自由時間や放課後にやりたくなるようなプログラムを提供し、教室時間外の運動量確保に繋げてほしい。
R.Y.指導員 担当教室の特性から子ども自身が自らの可能性や達成目標に挑戦できる環境づくり。「できる」、「できない」だけに拘らず、集団や複数人で共感を味わえる遊びの中で相手とリズムや力を合わせて得た達成感を共有する。
N.M.指導員 子らの興味や好奇心を優先し「遊びの楽しさ」が繰り返し実感できるように努めている。保護者の抱く疑問や不安に寄り添うことで、会話から社会のニーズの変化を察知、指導に反映させる。
I.M.指導員 直接、運動種目を指導するのではなく、運動種目を構成している動きの要素を組み入れた新作遊びで子供を夢中にさせる。動きの持つリズムを重視した遊びによって、動きの体験を増やす。
 このように指導員が大切にする教室への願いを具現化する指導が続く「げんきキッズ教室」は、「めざす3つの像」に裏打ちされながら認定指導員の個性と受講児とで創り上げていく教室であります。その意味で「げんきキッズ教室」は真に生きものです。
 

 

札幌市の運動教室「げんきキッズ」の步み
北翔大学名誉教授 晴山紫惠子
(一財)さっぽろ健康スポーツ財団