園生活に根付かせた体力向上策 〜自由遊び時における取り組み〜

 

 本園では、教育目標のひとつに“楽しくあそびに打ち込める子”を掲げている。園児達は登園後、背負っていた通園カバンをロッカーに掛け、すぐさま外で自由遊びを始める。昼食後においては満3歳から6歳までの全園児が一斉に外で自由遊びを始める。さらに、保育終了後においても外で遊べる時間があり、園児達の登園降園方法にもよるが毎日150分以上にもなる自由遊びの時間を設けている。園庭は園児達の活気に満ち溢れ、各々が楽しくあそびに打ち込んでいる。その上で本園が大切にしていることは、外で自由に遊べる時間を確保するだけでなく、園児達にできるだけ多くのあそびの楽しさを知ってもらい、幅広く、様々なあそびの経験ができるよう取り組んでいることである。もちろん、外遊びは自由遊びの時間なので子ども達が好きなあそびを自由に選択し、伸び伸びと遊ぶことが大前提である。しかしながら、多種多様な動きの経験が必要とされる幼児期において“好きなあそびを好きなだけ”では、あそびの嗜好性から経験する動きに大きな偏りが生じる可能性が考えられる。そのため、本園では、私たち大人が子ども達に様々なあそびの楽しさを伝えることや様々なあそびが経験できるよう意図的な取り組みを行っている。
 そのひとつに“今月のあそび”がある。園児達に馴染みのあるあそびから伝承遊びまで毎月異なるあそびを2種類ほど決め、園庭に大きく掲示している。月初めには全園児に今月のあそびを紹介する時間を設け、その遊び方を説明する。保育者が実演しながら遊び方の説明をすることで園児達の今月のあそびに対する興味関心は一気に高まり、園児達は思わず遊びたくなる。年齢によって理解力は異なるものの、同じあそびを園全体で共有することによってあそびに話題性が生まれ、年長児と年少児が一緒になって遊ぶなど異年齢交流のきっかけにもなっている。また、体育を専門としない保育者においても園児達と実践できるあそびの幅が広がる機会になっており、自由遊びの時間だけでなく保育のちょっとした時間においても今月のあそびを活用している。あそびに話題性を持たせるというシンプルな取り組みではあるが、各々が好きなあそびにプラス1の存在があるだけで結果的に園児達は様々なあそびの楽しさに触れることができる。本園では、この他にも様々な取り組みを実践しているが、体力・運動能力の向上および運動習慣の充実は“体育の先生の役目”という認識では、どの取り組みもトピックスで終わってしまうため、保育者を含めた子どもに関係するすべての大人がひとつのチームであることを念頭に置き、園生活に根付かせながら取り組んでいくことを何より大切にしている。

 
(学)春日学園 スポーツ指導教諭 水田晃平