保育者養成校における最近のトピックス その2
保育内容『健康』/総合的指導法『健康』

 前回(資格取得に向けた履修科目等の概要紹介)に引き続き、保育者養成校(以下、養成校と記す)における保育内容「健康」(総合的指導法「健康」を含む)についてご紹介します。
 保育内容「健康」は、保育に係る5つの領域の中の第一に挙げられる領域であり、幼稚園教諭免許/保育士資格取得のための必修科目です。各要領/指針の本領域のねらいには、共通して(1)明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。(2)自分の体を十分に動かし進んで運動しようとする。(3)健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け見通しをもって行動をする。と記されており、各養成校はこのねらいを踏まえ、幼児が環境に関わって展開する具体的かつ総合的な活動を念頭に「運動発達とあそび、生活リズム/基本的生活習慣、食育、健康及び安全」の柱を中心に、小学校との接続を視野に入れた授業を展開します。
 今回の改訂では、各領域に「総合的指導法」という科目が新設され、特に当該科目合計5科目に対しては一層のアクティブラーニングの充実/IT活用/気になる子どもへの支援の視点も求めたため、各養成校は現場活用を鑑みた工夫を求められました。教授者側の目下の課題は、一学期15回の授業回数の中で各回の授業内容を深める作業を学生の自学力(予習/復習)に委ねざるを得ない状況下、習熟度の分散を最小にする対応と認識しています。
 例えば、私の授業では、2週にわたって、導入に教室で散歩等の実際についての講義・演習を行った後、校外にでて実際に散歩を体験し、それらを元にパソコンを用いて遊びマップを作成したり、3週にわたって、導入に教室で講義・演習を行ったのち、外部の団体との協働による冒険あそび体験を実際に行い、それを元に指導案の作成をしたりする。また、安全に関する講義を土台に子ども向けあるいは保護者向けのポスターの作成をするなど、全授業において理論と実践が一体となった内容を心掛けています。そして、保育者養成校でも教員集団に現場経験者の一定配置が求められ、学生はより現場に即した授業を聞く機会が増えました。なお、子どもの運動あそびを経験する科目として、保育の総合的指導法「健康」をはじめ、保育内容「表現」、さらに「小学校教員養成課程との共通科目を設置」している養成校もあります。
 そして、今回の改訂では、上記のねらい及び内容に基づく保育活動全体を通して幼児の資質・能力が育まれている幼児の幼稚園修了時(小学校就学時)の具体的姿を“幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿”として具体的に示しており、これは到達すべき目標ではないことに留意するとともに 、乳幼児期が長い生涯をより良く生きていくために大切な時期であることの重要性を認識するよう提示されています。指針/要領の改定は定期的に実施されますが、今回の改訂では交通事故や自然災害を念頭においた、“安全教育”に関する変更もありました。次回の改訂についても引き続き注視していきたいものです。
 

和泉短期大学教授 井狩芳子