ちょっとした冒険や挑戦と子どもの育ち

 「過保護すぎないですか?」中学校の教育実習を終えたまじめな学生が納得のいかない表情で質問に来ました。体育の授業を担当し、指導を受けてそう感じたというのです。
学習指導要領の総則に「生きる力を育むことを目指す」と記されており、「生きる力」は、確かな学力、豊かな心、健やかな体の「知・徳・体」で構成されます。体を動かすことが、情緒面や知的な発達や、コミュニケーション能力や論理的思考力を育むことにも資するとされています。
 前職で小学校の特別支援学級の担任教諭をしていたとき、週3回の体育をすべて1時間目に設定しました。そうすると2時間目以降の授業で集中して取り組むように感じたからです。少しステップアップした課題を用意して、みんなちょっとした“冒険”に挑戦できるようにと工夫していました。友だちと思い切り動いて、達成感や満足感を味わうとその後の授業に気持ちよく向かえると考えていました。振り返ると、幼児期に大切とされている「様々な遊びの中で、興味、関心、能力に応じて全身を使って活動することにより、十分に体を動かす爽快感を体験し,自ら体を動かそうとする意欲を育てる」を体現してくれていたようにも思います。
我々の幼児の研究において、家庭の運動志向性や親子の運動頻度が高いと身体活動量が増加し、体力の向上に寄与することが分かりました。運動遊びは、認知機能や気持ちの安定にも繋がります。様々な”リスク”を伴う外遊びの経験が、子どもの健康やアクティブなライフスタイルを促進する一つの手段として重要であるとする研究もあり、普段の子どもの様子を見ると、ちょっとした冒険を含むような運動遊びが、気付きや心身のステップアップのきっかけを作るようにも思えます。
 

京都先端科学大学 青木好子