発育を測る

 私たちヒトが出生して成人になるまでの発育を数値化することで、目の前の子どもがどれぐらいの発育途上なのか、望ましい発育をしているのか、などということの評価ができます。子どもたちがたまに会う親戚から「大きくなったね」と言われるように、身長はもっともわかりやすい発育の指標です。わが国では、学校での身体計測において身長と体重は明治時代からずっと計測が続けられ、文部科学省のホームページから全国平均値を誰でも見ることができます。こうしたデータは非常に貴重なものですが、身長と体重だけで身体発育の全てが明らかになるわけではありません。
 私たちの研究室では、身体の中身である骨や脂肪、筋肉の量を数値化して、それらがどのように発育に従って変化して行くのか、男女での違いはどうか、などを調べています。ごく微量のX線で全身を計測し、そこに含まれる骨、脂肪などの身体の成分の重量を計算するDXA装置を用いています。これらの結果から、特に運動をすることによってどのように身体が変わっていくかが明らかになってきます。私の勤務する体育・スポーツ科学系の学部では子ども時代から活発に運動に参加した学生たちが多く、彼らの身体の中身を数値化することで運動の効果がわかります。長距離走などの持久系のスポーツを継続している学生では脂肪量が少なく、瞬発系のスポーツを続けている学生は筋肉の量が多く骨の量も多くなっています。
 大学生を計測して得られる数値は長年の運動の結果ですが、実際にどのような時期に、どのような増え方をするか、についてはまだ十分にわかっておらず、逆にどんな時期にどんな運動をすれば望ましい増え方になるのか、も厳密にはわかっていません。そこで、現在、いろいろな運動に参加している子どもたちに来てもらって「増え方」を調べています。
 

早稲田大学准教授 鳥居俊